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得意時代と失意時代

およそ人の禍は、多くは得意時代に萌すもので、得意の時は誰しも調子に乗るという傾向があるから、禍害はこの欠陥に食い入るのである。ならば、得意の時だからといって気をゆるさず、失意の時だからとて落胆せず、平常心を保つことを意識することが重要である。つまり、『勝って奢らず、負けて腐らず』と同じ意味である。『名を成すは常に窮苦の日にあり。事を敗るは多く得意の時に因す』と古人も言っているが、この言葉は真理である。

困難に処するときは、ちょうど大事に当たったと同一の覚悟をもってこれに臨むから、名を成すにはそういう場合に多い。世に成功者と目せらるる人には、必ず『あの困難をよくやり遂げた』、『あの苦痛をよくやり抜いた』というようなことがある。これすなわち心を締めてかかったという証拠である。かの徳川家康が抜きんでて持ち合わせていたという『レジリエンス』の能力が 、これにあたるのだ。

参考文献

論語と算盤

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