ポスター画像出典:『Amazon.co.jp』
レビュー
2020年現在も英国の女王を務め、2015年9月9日には在位期間が63年と216日となり、ハノーヴァー朝第6代で『大英帝国全盛期』のヴィクトリア女王を抜いてイギリス史上最長在位の君主となったエリザベス2世のドキュメンタリー映画。このあたりの映画がいくつもあり、更にすべてイギリスの要人たちの重要なシーンだからまとめてみよう。
- 英国王のスピーチの真実~ジョージ6世の素顔~
- ウォリスとエドワード 英国王冠をかけた恋
- 英国王のスピーチ
- エリザベス2世 知られざる女王の素顔
- ロイヤル・ナイト 英国王女の秘密の外出
こういう順番で観ていくのが一番いい。更にその間に、
- ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男
- マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙
- ダイアナ
を観ればより完璧だ。エドワードというのは『英国王のスピーチ』の主人公ジョージ6世の兄だ。そしてジョージ6世の娘がエリザベス2世である。
彼女の現在の顔と、その豪華絢爛ないで立ち、取り巻き、環境を見ると、正直『いけすかねえ権力ババア』という印象が一瞬でも頭をよぎってしまう。しかしこれはニーチェの言うところのルサンチマン(弱者の強者への妬み)に近い、嫉妬交じりの男性的エネルギーであり、彼女の実態を表すために十分な感想ではない。
今回、もちろんこれがイギリスが作ったドキュメンタリー映画ということもあり、美化正当化の可能性を考えながら半信半疑で観たわけだが、歴史的な事実を大きく捏造はできない。断片的には可能だが、長い歴史をつなぎ合わせてつじつまを合わせるのは難しい。だから真実を語った方が早い。そういう意味で、歴史を紐解きながら解説していくこの映画には、過度な捏造はないように見えた。違和感はない。
例えば、彼女の若い頃の顔だ。それは見たことがなかった。子供の頃どういう人で、家族とはどういう仲で、どういう責任を負ってきたか。どんな時に笑顔になり、どんな恋愛をし、どんな決断をしてきたかという長い歴史をつなぎ合わせて考えていくと、彼女の全体像が浮き彫りになる。すると、彼女に抱いていた感想は大きく変わった。
彼女はとても誠実で、芯のある人間であり、『英国のシンボル』として相応しい存在で、称賛に値する生き方をしてきた。もちろんこう思わせる為のドキュメンタリー映画だろうから半信半疑でいいが、しかし、我々が今まで平成天皇に思い抱いてきた印象と同じように、悪く思うようなところはなく、むしろ寛大で、器が大きく、穏やかかつその根幹には絶対に譲れない信念を抱えていて、強く優しい国のトップに相応しいポテンシャルを持っているように見えた。
ただ彼女は不動産王の一面も持っている。2017年11月6日、エリザベス2世英女王の個人資産のうち約15億円がタックス・ヘイヴン(租税回避地)で運用されていたことが明らかになった。規制当局に処罰されたり、税金滞納で破産申請したりしたバミューダ諸島やケイマン諸島の企業が含まれていた。これに関してはノータッチであることから、全容は見れないだろう。かつて、エリザベス1世が当時の覇者であったスペイン帝国に負けないイギリスの基礎を作り、その後ヴィクトリア女王時代にはこの世界のトップに君臨するまでの『大英帝国』を作った。
ということは、その帝国の栄光の『生贄』になった国や人々がいるわけだ。インドを筆頭に、それに抗う人々が世界で続出。フランス同様戦争後に植民地という『収入源』を大きく失い、この世界のトップから引きずり降ろされ、その代わりにトップになったのがアメリカ合衆国だ。
映画『マンソンの女たち』では黒人が『1619年にこの地に来た』と言うセリフがあるが、『ワンピースマガジン10巻』にはこうある。
更なる詳細は本にあるが、ここにはそのエリザベス1世も暗に関わっていて、この時代の闇が暴かれている。イギリスが世界を支配したのはなぜか。この世界でモンゴル帝国と並んで世界一その領地を拡大したと言われるイギリスが、モンゴル帝国よりもソフトな印象があるのは、その辺りの情報操作を上手にやっているからなのかもしれない。
補足分析(構造限定)
認知・心理構造
・君主は「人格」ではなく「象徴」として認識されやすく、私的側面が不可視化される構造
・長期在位が継続性と安定の象徴として受容され、個別判断の検証が後景化する心理作用
倫理・価値観の揺れ
・個人の誠実さと、国家・帝国が背負ってきた歴史的負債との緊張関係
・模範的君主像と、権力に付随する利害構造が同時に存在する局面
社会構造・制度背景
・立憲君主制において、実権を持たない存在でありながら国家の顔として機能する制度構造
・王室が政治・経済・歴史と象徴的に結びつき続ける力学
言葉・定義・前提破壊
・「女王」「象徴」「伝統」といった語が、制度の連続性を正当化する装置として働く
・中立性を示す表現が、歴史的責任の所在を曖昧にする逆説
現実対応構造
・映画内の構造は、象徴的権力と実質的影響力が乖離する現代国家全般と同型である
論点抽出(問い)
- (問い1)象徴的存在は、どこまで歴史的責任を引き受けるべきか
- (問い2)個人の人格評価は、制度の評価と切り離せるのか
- (問い3)長期的安定は、検証の停止を正当化するのか
- (問い4)伝統は、どの時点で批判不可能な領域になるのか
- (問い5)沈黙は中立か、それとも選択か
人間理解ポイント
・人は象徴に人格を投影する
・安定は疑問を鈍らせる
・敬意は批判を後退させる
・役割は個人評価を上書きする
抽象コア命題(普遍層)
- 命題1:(象徴は責任を曖昧にする力を持つ)
- 命題2:(長期的安定は、問いを見えにくくする)
- 命題3:(制度は個人の誠実さを利用して存続する)
誤認リスク補足
・本作を単純な王室礼賛/王室否定として読むのは誤り
・個人像のみを追うと、制度構造が不可視化される
・史実の網羅性と、構造提示を混同しやすい
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