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『タップス』 レビュー(感想)

ポスター画像出典:『ヤフー映画

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 レビュー

トム・クルーズの映画デビューが1981年。これはその年の映画だ。それだけで貴重である。たまたまFilmなんたらの感想を見たらやれ『青春映画の域を出ない』だのなんだの。的を射ていないのはその視聴者である。

 

孔子は言った。


  1. 軍備
  2. 食糧
  3. 信頼関係


この3つだ。そして、この中でまず最初に犠牲にするとしたら、 迷わず『軍備』と言ったという。当然だ。戦争など必要ない。だが、『ある』ではないか。日本人の脳裏によぎるのは『憲法9条』と『自衛隊』の存在だ。


軍隊は『殺虫剤』のようなものだ。自分にとって害悪だと思う時だけ使用し、その要素は腐らないよう常にメンテナンスを求められ使うと使うで煙たがられる。我々はその『毒素』によって生活の基礎と安寧な日々を獲得するが、直接頼んだわけではないので責任感などない。この矛盾たる無責任なエゴチズムによって生み出された悲劇が、今回の物語のベースとなっているのである。


『何をしたかったのか』ではない。それは、彼ら自身が『国に』問いかけたいことなのだ。国を守るために戦っていたんじゃないのか。名誉を守って大義に死ぬという誇りを支えに、血の涙を流して奮闘してきたんじゃないのか。


俺たちは用済みなのか。軍隊が矛盾した存在なのか。最後、『TAPS』というタイトルの意味を再考したとき、この映画のメッセージが完成することになる。


そのメッセージを受け取れずに表層だけ見て戯言を言っている人間は、戦争を知らないか、戦場を具体的に想像できずぬるま湯につかっている、単なる平和ボケした先進国の小僧である。ちなみに孔子は、2500年前の人物だ。

補足分析(構造限定)

認知・心理構造
・「軍=守る存在」という単純化された前提が、役割の縮小・否定に直面した瞬間に崩壊する心理
・秩序・規律・名誉を内面化した若者ほど、外部の決定(国家・制度)を裏切りとして受け取りやすい構造
・自らの行為を“反抗”ではなく“使命の継続”として正当化する認知の転位

倫理・価値観の揺れ
・平時の合理性(コスト削減・不要論)と、有事を前提とした倫理(覚悟・犠牲)の衝突
・「使わないことが正義」と「備えていることが責任」のあいだで揺れる価値軸
・命令への服従と、自ら信じた大義への忠誠が乖離する局面

社会構造・制度背景
・国家が軍事を「必要悪」として扱うときに生じる、現場との断絶
・制度としての軍と、精神共同体としての軍の非対称性
・平和が長期化した社会ほど、軍事の“存在理由”が不可視化される構造

言葉・定義・前提破壊
・「国防」「平和」「不要」という語が、立場によって正反対の意味を持つ前提の破壊
・“用済み”という評価が、機能評価であって人格否定ではないという制度側の論理と、当事者側の感情の断絶

現実対応構造
・映画内構造は、現代社会における軍・警察・治安組織の位置づけと同型
・「使われないこと」を前提に存在する装置が、当事者の尊厳をどう扱うかという普遍的問題を示す


論点抽出(問い)

  • (問い1)平和とは、誰の犠牲によって成立しているのか
  • (問い2)制度は、役割を終えた存在の尊厳をどこまで引き受けるのか
  • (問い3)忠誠は、命令と信念のどちらに向かうべきか
  • (問い4)備えを否定する社会は、危機に耐えられるのか
  • (問い5)若さと規律は、どの条件で暴走に転化するのか

人間理解ポイント

・人は「役割」を失うと、存在意義そのものを問う
・信念は、外部からの否定によって先鋭化する
・秩序を守る訓練は、同時に破壊の技術でもある
・平和は、維持の責任が見えなくなったときに形骸化する


抽象コア命題(普遍層)

  • 命題1:(備えを否定する社会は、備えを担った者を孤立させる)
  • 命題2:(秩序への忠誠は、裏切られた瞬間に反転する)
  • 命題3:(平和は、無責任の上には成立しない)

誤認リスク補足

・本作を「単なる青春の暴走」として読むのは誤り
・若者の過激性だけに焦点を当てると、制度側の矛盾が不可視化される
・軍事肯定/否定の二元論で読むと、問いの射程が著しく狭まる


【テンプレ追記|解釈レイヤー固定文(共通)】

※本テンプレにおける補足分析は、筆者の主張・結論・立場表明を示すものではない。
※各作品は、筆者が内在させている「真理からの距離に対する違和感」や思考過程が、どのように照射・再確認されたかという構造的契機として扱われる。
※したがって、未来予測・価値判断・断言的結論として読むことは想定されていない。


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