ポスター画像出典:『映画.com』
レビュー
まず、この手の歴史映画はマイナー扱いされるのか、邦題はゲームのタイトルのようになるのが相場だ。『ヴァイキング・サーガ』とか、『バタリオン ロシア婦人決死隊VSドイツ軍』とか、何かと格好いいっぽいゲームタイトル、あるいは少年漫画にバトルが求められるように、その要素を前面に押し出すことが多い。『ドラゴンボール』も、鳥山明は最初もっとアドベンチャー要素の漫画を描きたかった。だから最初は『Dr.スランプ』からの流れでギャグな描写も多かった。だが、少年ジャンプの需要に応えなければならず、バトル要素のある漫画へと切り替わっていった。今、彼があの漫画の続きをもう描かなくなったのは、最初から別に描きたくなかったという本音が存在するからなのかもしれない。
そうした目線を一つ持っておくとこの手の映画に強くなる。つまり、過信しないようになるわけだ。バトルよりも歴史的な会話のシーンが多くても不思議ではないと感じるようになり、『思い込みによる不一致』が生じず、映画に対する評価も低くなくなる。だが、『ロシア史に残る伝説の戦い「バトゥのリャザン襲撃の物語」をモチーフに描かれる、強大なモンゴル帝国軍にたった1人で立ち向かったロシア最強の剣士コロヴラートの、爽快なソードアクション』という広告では、誰もが無双ゲームのようなイメージを思い浮かべてしまうだろう。
時は13世紀(1237年)のロシア。当時の世界を制覇していたのはモンゴル帝国だ。
ヨーロッパの覇権の推移
紀元前7世紀の前半~紀元前609年。オリエントの統一王朝を成し遂げるが、アッシュル・バニパルの残虐性のせいで帝国が破綻する。
紀元前525年~紀元前330年。キュロス、カンビュセス2世、ダレイオス1世また統一し直し、インド北西部からギリシャの北東にまで勢力を伸ばす。
紀元前330~紀元前148年。フィリッポス2世がギリシャを、アレクサンドロスがペルシャを制圧。
紀元前27年~1453年5月29日(完全な崩壊)。カエサルが攻め、アウグストゥスが守る形で『ローマ帝国』が成立。
1200~1300年。チンギス・ハンが大モンゴルの皇帝となり、5代目フビライ・ハンの時にはアレクサンドロスよりも領土を拡大。
1453年5月29日~。かつてのローマ帝国は、『神聖ローマ帝国』と『ビザンツ帝国』の東西分裂をしていて弱体化していた。1453年5月29日、メフメト2世がビザンツ帝国の首都コンスタンティノープルを征服。
ロシアという名前はないので『ウラジーミルスーズダリ大公国』となる。その大公であるユーリー2世は、モンゴル帝国のバトゥ軍に圧迫されていた。モンゴル帝国の創始者チンギス・ハンの長男であるジュチ。この男の次男がバトゥである。
果たして、当時世界最強を誇ったモンゴル帝国の莫大なエネルギーに、この剣士がどこまで通用するか。それが一つの見ものである。また、それよりも重要なのがこうして動画配信サービスで世界の映画が簡単に観れるようになり、歴史映画として紹介すべき映画の空白が埋められるようになったことである。モンゴル帝国時代やロシアの歴史を描く映画がほとんどなかったので、歴史ファンとしては今後が楽しみだ。私は別にファンではないが、人間として堂々と生きていくために欠かせない要素なので、有難い。
補足分析(構造限定)
認知・心理構造
・「一騎当千の英雄」という物語枠が先行し、集団戦・政治圧力・時代制約が後景化される構造
・圧倒的強者(帝国)に対峙する個の行為が、希望や象徴として過大化されやすい心理作用
倫理・価値観の揺れ
・生存のための抵抗と、英雄化される自己犠牲が同時に評価される局面
・勝敗の必然性(勢力差)と、尊厳の保持(抵抗の意味)が交差する価値の二重化
社会構造・制度背景
・遊牧帝国の機動力・統率と、分権的公国の防衛体制の非対称性
・英雄叙事が、敗北や占領の記憶を耐えうる物語へと変換する文化装置
言葉・定義・前提破壊
・「最強」「無双」といった語が、史実の複雑性を単純化する装置として機能
・英雄譚が、集団の敗北経験を意味づけし直す前提の転倒
現実対応構造
・映画内の構造は、圧倒的格差下で生まれる象徴的抵抗と、記憶の物語化が並走する歴史叙述と同型である
論点抽出(問い)
- (問い1)英雄化は、どの段階で歴史理解を助け、どの段階で歪めるのか
- (問い2)象徴的抵抗は、敗北の意味をどう再定義するのか
- (問い3)勢力差が明白な戦いに、どのような合理性が与えられるのか
- (問い4)物語は、集団の尊厳をどこまで回復できるのか
- (問い5)史実と叙事の境界は、誰が決めるのか
人間理解ポイント
・人は不利な現実を物語で耐えうる形に変換する
・象徴は希望を生むが、複雑性を削ぐ
・英雄像は集団記憶を束ねる
・敗北は意味づけによって再解釈される
抽象コア命題(普遍層)
- 命題1:(象徴的抵抗は、敗北の経験を尊厳へ変換する)
- 命題2:(英雄叙事は、歴史理解を促進しつつ単純化も招く)
- 命題3:(物語は、勢力差の現実を心理的に横断する)
誤認リスク補足
・本作を純粋な無双活劇として読むのは誤り
・史実再現の厳密性のみを論じると、叙事の機能が見えなくなる
・英雄個人の行為と、時代構造の制約を混同しやすい
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