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『ハンティング・パーティ』 レビュー(感想)

ポスター画像出典:『映画.com

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レビュー

ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争の戦争犯罪人を追うアメリカ人ジャーナリストを描いた実話ベースの映画。1992年から1995年まで続いた内戦で、ボスニアの内戦とも言われ、『第二次世界大戦後の最悪の紛争』と言われる。そのゆえんが映画を観ていればよくわかるはずだ。作中ではある程度コメディタッチで『やんわりと』しているので明言されないが、雑誌『エスクァイア』のジャーナリストの話だ。


少し変わった人間だが、このような人間じゃなきゃ切り開けない難問というものがある。事実、彼の周りにいる常識人たちは、彼の行動を阻止しようとする。あまりにも危険だと。だがそれは逆に言えば、それだけ危険な問題が野放しになっているという意味でもあるのだ。その悪の親玉たちのモデルになっているのはカラジッチ、ムラディッチという人物だが、これはWikipediaにも詳細があるユーゴスラヴィアの戦犯である。


実はリチャード・ギアというのは『愛と青春の旅立ち』を含め、今まで一度もアカデミー賞にかかわっていない。男優賞も、作品賞などもすべて受賞していない。彼は毎年一本ずつほどのペースで映画に出ているが、その映画も飛び切り知名度があるものがるわけでもなく、超一流俳優の座にいるとは言えない様子なのである。何かと日本に馴染みある俳優で、黒澤明の『八月の狂詩曲』にも特別扱いする必要はないとして安いギャラで志願していたようで、そういうこともあって妙に垣根が低く、日本人が彼に持つ印象は良いのだが、ハリソン・フォードやトミーリージョーンズらと同じかと言えば彼らの方が賞を受賞しているという面では良い映画に出ているor演じているようだ。


だからなのか、彼の映画には『二流映画』のような印象がついている。『クロッシング』で演じた彼も堕ちた人間だし、大した役をやることができないのかという疑いをどうしても持ってしまうのだ。だが、だからこそかもしれないが、この映画は良い意味で裏切ってくれる。実話を切り取ったということもあるが、彼の持つ穏やかな男の印象とは違う一面をしっかりと見せてくれている。


まさかこんなことが実際に存在したとは。エンドロールで衝撃を受ける人も大勢いるだろう。

補足分析(構造限定)

認知・心理構造
・戦争犯罪は「すでに終わった過去」として周縁化され、現在の責任主体が不可視化される構造
・危険を承知で踏み込む少数者の行動が、周囲の「常識」によって逸脱と見なされる心理作用

倫理・価値観の揺れ
・報道の使命と個人の安全が正面衝突する局面
・正義の追及が、結果として無謀・道化・娯楽として消費され得る逆説

社会構造・制度背景
・国際社会・司法機関・政治的利害が絡み合い、戦争犯罪の追及が停滞する力学
・メディアが権力監視装置である一方、商業性によって制約を受ける構造

言葉・定義・前提破壊
・「平和」「終結」「和解」といった語が、未処理の犯罪を覆い隠す装置として機能
・コメディ的演出が、現実の残虐性を間接的に照射する前提の転倒

現実対応構造
・映画内の構造は、国際紛争後における責任追及の空白と、ジャーナリズムの限界が交差する現実と同型である


論点抽出(問い)

  • (問い1)戦争犯罪は、なぜ「忘却」されやすいのか
  • (問い2)危険を冒す行為は、正義の条件になり得るのか
  • (問い3)常識的判断は、どこまで真実追及を阻害するのか
  • (問い4)笑いは、残虐な現実を伝える手段になり得るのか
  • (問い5)正義は、誰がどの立場で執行すべきなのか

人間理解ポイント

・人は危険な真実から距離を取ろうとする
・常識は問題を固定化することがある
・正義は安全圏からは進みにくい
・滑稽さは恐怖を可視化する手段になり得る


抽象コア命題(普遍層)

  • 命題1:(未処理の犯罪は、時間によって自動的に解決しない)
  • 命題2:(正義の追及は、常に合理性と衝突する)
  • 命題3:(真実は、危険を引き受ける者によって可視化される)

誤認リスク補足

・本作を単なるコメディ/娯楽映画として読むのは誤り
・実在人物モデルの善悪評価に終始すると、構造的問題が見えなくなる
・主人公の特異性と、社会全体の責任を混同しやすい


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