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『俺たちに明日はない』 レビュー(感想)

ポスター画像出典:『Yahoo!映画

目次

レビュー

世界恐慌時代の実在の銀行強盗であるボニーとクライドの実話である。アメリカン・ニューシネマの一つとされる作品で先駆的作品として有名。この作品が他のアメリカン・ニューシネマと違うのは、やはり実話ベースだからである。では、アメリカン・ニューシネマの代表作ということで、ここにWikipediaからそれらの作品の詳細を引用しよう。


『ディア・ハンター』『地獄の黙示録』なども、ニューシネマの末期に付け加えることが可能である。

タイトル/原題公開年監督出演あらすじ、補足等
俺たちに明日はない
Bonnie and Clyde
1967年アーサー・ペンウォーレン・ベイティ
フェイ・ダナウェイ
世界恐慌時代の実在の銀行強盗カップル、ボニーとクライドの無軌道な逃避行。
卒業
The Graduate
1967年マイク・ニコルズダスティン・ホフマン
アン・バンクロフト
キャサリン・ロス
年上の夫人に肉体を翻弄される若者の精神的葛藤と自立。サイモン&ガーファンクルの「ミセス・ロビンソン」や「サウンド・オブ・サイレンス」も有名。
ワイルドバンチ
The Wild Bunch
1968年サム・ペキンパーウィリアム・ホールデン
アーネスト・ボーグナイン
ロバート・ライアン
西部を荒らしまわる強盗団「ワイルドバンチ」の壮絶な最期。
イージー・ライダー
Easy Rider
1969年デニス・ホッパーピーター・フォンダ
デニス・ホッパー
ジャック・ニコルソン
社会的束縛を逃れて自由な旅を続ける若者たちが直面する社会の不条理と無残な最期。
明日に向って撃て!
Butch Cassidy and the Sundance Kid
1969年ジョージ・ロイ・ヒルポール・ニューマン
ロバート・レッドフォード
キャサリン・ロス
西部を荒らしまわった実在の強盗の友情と恋をノスタルジックに描く。ラストシーンと主題歌が著名。
真夜中のカーボーイ
Midnight Cowboy
1969年ジョン・シュレシンジャージョン・ヴォイト
ダスティン・ホフマン
ニューヨークの底辺で生きる若者2人の固く結ばれた友情とその破滅に向う姿を描く。
女王陛下の007
On Her Majesty’s Secret Service
1969年ピーター・R・ハントジョージ・レーゼンビー
ダイアナ・リグ
テリー・サバラス
英国秘密情報部員と犯罪組織の娘の恋と結婚。そして、その娘の死。
M★A★S★H マッシュ
M*A*S*H
1970年ロバート・アルトマンドナルド・サザーランド
トム・スケリット
エリオット・グールド
サリー・ケラーマン
朝鮮戦争での野戦病院の人々を描いたブラックコメディー。
小さな巨人
LITTLE BIG MAN
1970年アーサー・ペンダスティン・ホフマン
フェイ・ダナウェイ
121才の主人公がその生涯を語るアメリカ先住民として、また白人として生きた男のアメリカ史。
いちご白書
The Strawberry Statement
1970年スチュワート・ハグマンブルース・デイヴィスン
キム・ダービー
学園紛争に引き裂かれていく男女2人の恋。
ファイブ・イージー・ピーセス
Five Easy Pieces
1970年ボブ・ラフェルソンジャック・ニコルソン裕福な音楽一家に育ちながら、他の兄弟とは異なる流転の青春を送る男の心象を淡々と描く。エンディングが印象的な作品。
フレンチ・コネクション
The French Connection
1971年ウィリアム・フリードキンジーン・ハックマン
ロイ・シャイダー
フェルナンド・レイ
麻薬組織に執念を燃やす刑事の活躍。若者や反体制側でなく、体制側の視点から社会病理を描く。
バニシング・ポイント
Vanishing Point
1971年リチャード・C・サラフィアンバリー・ニューマン
クリーヴォン・リトル
デンバーからカリフォルニアまで、15時間で陸送する賭をした男の「消失点」を描いた物語。
ダーティハリー
Dirty Harry
1971年ドン・シーゲルクリント・イーストウッド
アンディ・ロビンソン
殺人を犯しながら無罪放免になった犯人と刑事との攻防を描き、加害者と被害者の人権問題を提起している。 
時計じかけのオレンジ
A Clockwork Orange
1971年スタンリー・キューブリックマルコム・マクダウェル近未来のイギリスを舞台に、欲望の限りを尽くす荒廃した自由放任と、管理された全体主義社会とのジレンマを描く風刺的作品。
ハロルドとモード
少年は虹を渡る
Harold and Maude
1972年ハル・アシュビールース・ゴードン
バッド・コート
19歳の自殺を演じることを趣味としている少年と、79歳の天衣無縫な老女との恋を描く。
破壊!
Busting
1973年ピーター・ハイアムズエリオット・グールド
ロバート・ブレイク
麻薬組織と癒着した警察に反旗を翻す刑事2人の活躍と挫折。
ダーティ・メリー
/クレイジー・ラリー
Dirty Mary Crazy Larry
1973年ジョン・ハフピーター・フォンダ
ヴィック・モロー
カーレース用の車を手に入れるために現金強奪に成功した若者3人組と、それを追う警察とのカー・アクション。
スケアクロウ
Scarecrow
1973年ジェリー・シャッツバーグジーン・ハックマン
アル・パチーノ
偶然出会った二人の男のロードムービー。荒くれ者のアウトローと「スケアクロウ」な生き方をする陽気な男。正反対の二人が織り成す奇妙な交流と友情、そして悲劇。
ロング・グッドバイ
The Long Goodbye
1973年ロバート・アルトマンエリオット・グールド探偵のフィリップ・マーロウが友人の死をきっかけにある事件に巻き込まれていくレイモンド・チャンドラーのハードボイルド小説の映画化。
ペーパー・ムーン
Paper Moon
1973年ピーター・ボグダノヴィッチライアン・オニール
テータム・オニール
 
さらば冬のかもめ
The Last Detail
1973年ハル・アシュビージャック・ニコルソン
ランディ・クエイド
 
ミーン・ストリート
Mean Streets
1973年マーティン・スコセッシハーヴェイ・カイテル
ロバート・デ・ニーロ
 
セルピコ
Serpico
1973年シドニー・ルメットアル・パチーノ 
ラストタンゴ・イン・パリ
Last Tango in Paris
1973年ベルナルド・ベルトルッチマーロン・ブランド 
カンバセーション…盗聴…
The conversation
1974年フランシス・フォード・コッポラジーン・ハックマン 
チャイナタウン
Chinatown
1974年ロマン・ポランスキージャック・ニコルソン 
ハリーとトント
Harry and Tonto
1974年ポール・マザースキーアート・カーニー 
カッコーの巣の上で
One Flew Over the Cuckoo’s Nest
1975年ミロス・フォアマンジャック・ニコルソン
ルイーズ・フレッチャー
精神異常を装って刑期を逃れた男と、患者を完全統制しようとする看護婦長との確執 
狼たちの午後
Dog Day Afternoon
1975年シドニー・ルメットアル・パチーノ 
タクシードライバー
Taxi Driver
1976年マーティン・スコセッシロバート・デ・ニーロ
シビル・シェパード
ハーヴェイ・カイテル
ジョディ・フォスター
社会病理に冒され、異常を来した男の憤り。


これらの作品は名作と言われる作品が多い。タクシードライバー、カッコーの巣の上で、狼たちの午後、チャイナタウン、時計仕掛けのオレンジ、ダーティハリー、枚挙に暇がない。確かにそれらも相当に強い映画だが、やはりこの映画と『ダーティハリー』が二大巨頭だ。それはやはりその二つに実話が盛り込まれているからだ。狼たちの午後やフレンチコネクションもそうだが、全体的に言えばやはりこの映画が強い。


以下はこの映画の主人公、ボニーとクライドの写真である。大恐慌時代の1930年前後と、アメリカン・ニューシネマの1970年前後の2つの時代を代表する顔を持つ、歴史に残る名作と言えるだろう。


補足分析(構造限定)

認知・心理構造
・経済的閉塞が、逸脱行為を「生存戦略」や「抵抗」の物語へ変換しやすい構造
・名声(悪名)が当人の自己像を強化し、引き返し不能な自己演出へ傾く心理過程

倫理・価値観の揺れ
・被害者の苦痛と、アウトローのロマン化が同時に成立してしまう局面
・犯罪が道徳的逸脱である一方、時代の不満の受け皿として消費される二重構造

社会構造・制度背景
・大恐慌下の失業・貧困・金融不信が、治安と共感の両面で社会を不安定化させる力学
・メディア(報道・写真)が、犯罪を事件から神話へ変換する装置として機能する構造

言葉・定義・前提破壊
・「英雄」「反体制」「自由」といった語が、暴力と損害を覆い隠す前提の転倒
・実話が、倫理判断ではなく「資料」として提示されることで受容の態度が変わる構造

現実対応構造
・映画内の構造は、社会不安期におけるアウトロー神話の生成と、暴力の美化が並走する現実と同型である


論点抽出(問い)

  • (問い1)社会不安は、なぜ犯罪者の神話化を促すのか
  • (問い2)実話の提示は、倫理判断をどう変えるのか
  • (問い3)メディアは、どこまで事件の意味を作り替えるのか
  • (問い4)ロマン化は、被害の現実をどの程度不可視化するのか
  • (問い5)自由の語は、どの条件で暴力の免罪符になるのか

人間理解ポイント

・人は閉塞の中で逸脱に意味を求める
・名声は自己像を固定化する
・物語は暴力を美化し得る
・実話は記録としての重みを帯びる


抽象コア命題(普遍層)

  • 命題1:(社会不安は、逸脱を神話へ変換する)
  • 命題2:(物語化は、被害と加害の非対称を見えにくくする)
  • 命題3:(名声は、破滅を加速させる)

誤認リスク補足

・本作を単純な犯罪賛美として読むのは誤り
・アウトローの魅力だけを抽出すると、被害の構造が消える
・実話性と、演出による物語化を混同しやすい


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